小説とプログラミングのお話

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【小説家になろう】ゲーム実況による攻略と逆襲の異世界神戦記(アウタラグナ)(ネタバレあり)(完結済)

  今回の紹介は、小説家になろうにて連載され、講談社レジェンドノベルスで書籍化されている「ゲーム実況による攻略と逆襲の異世界神戦記(アウタラグナ)(作者:かすがまる様)」です。

 

 

この作品はこんな人におススメです

・主人公最強が好きな人

・神様視点で世界に介入するのが好きな人

・滅びに瀕した人類の終末戦が好きな人

・理不尽な逆境からの大逆転が好きな人

・死にゆくキャラの遺志を継いでいく展開が好きな人

 


 

 本作品は、2017年12月15日より「小説家になろう」で連載開始され、2019年8月12日に完結されています。

 この方の作品は他にも「小説家になろう」で投稿されていまして、戦記物の群像劇が本当に素晴らしい方だと思います。

 では、まずあらすじをどうぞ。

 

あらすじ

ドラゴンデーモンRPG……鬼のような難易度と理不尽極まるシステムでもって「マゾゲー」と愛されるタイトルである。ゲーム実況者・いもでんぷんは、そのDX版を購入、実況動画を撮り始めるが―――それが異世界における熾烈な最終戦争への介入であることを、気づいてもいない。

 

 

主人公

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現実世界のゲーム実況者。口調からは男のようにみえるが、性別不詳。

異世界において、ゲームを媒体に神として降臨する。


人間の守護神であり戦いの神であり火を司る神でもある。鬼神。

 

ある日、鬼のような難易度と理不尽極まるシステムでもって「マゾゲー」と愛されるタイトル「ドラゴンデーモンRPG」のDX版を購入し、ゲーム実況を始める。

当初はゲームだと思ってプレイしながら実況を続けていくが、やがてゲームの不思議さに気づき、異世界における人類種の守護神として、依り代の少女を操って人間を勝利へと導いていく。

通常版の「ドラゴンデーモンRPG」をやりこんでいるため、プレイヤースキルもさることながら、効率的な成長手順やボスキャラの行動パターンも熟知しており、それらを駆使して驚異的な戦果を叩きだす。

結果して、操るのが奴隷の少女という劣悪スタートでも彼女を神をも殺す英雄へと成長させた。

 

読んでみて

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ある日ゲーム実況者である「いもでんぷん」は、絶望した幼女が神に戦う力を乞い願う夢を見ます。

その世界が、過去にやり込んだオープンワールド形式のアクションRPG「ドラゴンデーモンRPG」に酷似していたことから、彼のゲームをやり込んだ後、ダウンロード販売限定のデラックス版……DX版を購入したまま放置していたことを主人公は思い出します。

夢で少女から受けた熱を胸に主人公は久しぶりに「ドラゴンデーモンRPG」をプレイして生実況することを決め、ゲームを進めていきますが、徐々にそのゲームの異常さ……つまり、ゲームを通して異世界を覗いていることに気づいていきます。

 

やがて、ゲームの異常さが現実世界にも影響し始め、主人公は現実世界と異世界、二つの世界で神として戦うことになる……といったお話です。

 

まずこのお話で特筆すべきは、その世界観でしょう。

 

「ドラゴンデーモンRPG」は、とことん人間が絶望するような世界観、設定をしています。魔物に苦労したり、エルフに支配されたり、ヴァンパイアに虐殺されたり……というのは文中の説明ですが、描写はもっと過酷です。

 

直接的なグロ描写はあまりありませんが、そういった事があったんだなと察する事ができるセリフや描写は多々でてきます。

遠回しに表現することで、ドラデモ世界の過酷さが上手く引き立てられていて、読んでいる最中は常に緊迫感や臨場感を感じさせてくれます。

 

舞台となるドラデモ世界には、かつていくつもの種族がいましたが、現在は3種族しかいないとされています。

 

水と風を操るエルフ、土と雷を操るヴァンパイア、そして火を操る人間。

 

他にもファンタジーではお馴染みのドワーフや、虫人間のインセクター、人魚や獣人なんてのもいましたが、ヴァンパイアやエルフに滅ぼされています。

 

現存する3種族とはいえ、世界はエルフとヴァンパイアにほぼ二分されており、人間は彼らの領域の境界となる緩衝地帯において、わずかに生き残ることを許されている種族でした。

 

人間がそんな状態に陥っているのは、種族間の戦闘能力の差、特に魔法の力に依るものです。

非力な人間は、エルフとヴァンパイアから徹底的に搾取されています。

ヴァンパイアからは文字通り食料としてみなされ、比較的親交のあるエルフですら人間は奴隷扱いで、人間の子供はエルフの眷属である猛獣の餌代わりといった過酷な世界です。

人間も火の力を持ってはいますが、エルフやヴァンパイアの力とは比較にならないほど弱いものでした。

 

その理由は、人間に加護を与える神が存在しなかったこと。

 

エルフには竜神、ヴァンパイアには魔神と呼ばれる神々が己の種族に加護を与え戦闘力を強化しています。

しかし、人間には加護を与える神がいなかった……そこに現れたのが主人公でした。

主人公はクロイと名付けた操作キャラの少女を通して、人間の神、鬼神として力を振るいます。

 

ちなみに、竜神や魔神も鬼神と同じく現実世界の人間が異世界へアクセスして神を演じており、それぞれ大きなバックがついていたり、超絶的な技能を持っていたりします。

 

一般人に過ぎない主人公ですが、彼?には通常版の「ドラゴンデーモンRPG」で蓄えた知識と磨き上げたプレイヤースキルがありました。

それらをもって主人公は奴隷の少女を鍛え上げ、数々の強敵を討ち果たしていきます。

 

当初は人間も鬼神の存在を知らないものですから、エルフやヴァンパイア、魔物相手に無双できるのは主人公の操る少女くらいしかいません。

それでも一騎当千の働きで孤軍奮闘する彼女に希望を見出した人間たちは、やがて彼女を通して人間の守護神、鬼神の降臨を知ります。

こうして人間たちは鬼神たる主人公への信仰を深めていくわけですが、過酷な世界だからこそキャラクターたちの神=主人公へと縋る姿が実に胸に来ます。

 

やがて信仰を集めたことで力を増した鬼神により、人間たちにも加護が与えられ、エルフやヴァンパイアとも互角に戦える力を持ちますが、元が滅びに瀕した弱小種族であった人間ですので、多少強化されても戦いは常にギリギリな状況。

そんな劣勢を少女の力と鬼神の加護によって切り抜け、人間たちは逆転とジャイアントキリングを続けていきます。

その様はタイトル通りの正に逆襲といった展開で、序盤から終盤まで息継ぎする暇がないくらい一気に走り抜けるような感覚です。

 

人間にとって理不尽な世界観なので、人間はどんどん死にます。

しかし、彼らはただ死ぬのではなく、必死に生き抜いて、次へと継がせるために死んでいくのです。

そして、少女はそんな彼らの魂を鬼神の加護により文字通り不死の軍勢として引き連れて戦う……戦死した戦士たちが舞い戻って戦列に参加する場面は本当に胸熱間違いなしです。

 

基本は主人公の一人称ではありますが、様々なキャラの視点が混じる群像劇でもあり、登場するキャラクターは多岐にわたります。

その上で、名もないキャラクターすらこの世界を生き抜いていいるという生き様を見事に見せてくれていて、この物語のキャラクターたちの存在感と世界の重厚さは本当に凄まじい。

敵キャラも、安直な噛ませキャラなんて殆どいません。

悪党は清々しいくらい悪党で、他の敵キャラもしっかりと信念をもって主人公たちにぶつかってきます。

 

何より、主人公が操作するキャラにもちゃんと意思があることが大きなポイントかなと思います。

昨今、VRMMOものなどでゲーム世界に持ちキャラで転移なんて物語はたくさんありますが、そういった話は基本的に持ちキャラ=主人公です。

しかし、このお話は操作キャラたる少女にも意思があり、世界で初めての鬼神の信徒として自身の全てを捧げて使徒という役割を全うしています。まあ、本当のゲームキャラではなく異世界人なので当然ではありますが……。

神官というとヤンデレっぽい狂信者とかがよく描かれますけど、真に神を想い、神を語る少女の醸し出す雰囲気が本当に凄い。

そんな少女と主人公の関係、そしてゲームとプレイヤーという関係を非常に上手く昇華させて世界観に落とし込んでいて、主人公が敬われる背景を作り込んでいるのは素晴らしいなと思います。

 

物語の持つ熱に圧倒される作品です。
読んでみるとそれがよくわかってくださると思います。
ぜひご一読ください。