小説とプログラミングのお話

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【小説家になろう】世界の闇と戦う秘密結社が無いから作った(半ギレ)【感想】(ネタバレあり)

 

  今回の紹介は、小説家になろうにて連載され、オーバーラップ文庫で書籍化されている「世界の闇と戦う秘密結社が無いから作った(半ギレ)(作者:黒留ハガネ 様)」です。

 

 

この作品はこんな人におススメです

・超能力ものが好きな人

・マッチポンプが好きな人

・正体不明のヒーローが好きな人

・細かい数字でもって検討することが好きな人

・一見普通でも癖のあるキャラ設定が好きな人


 

本作品は、2020年2月20日現在も小説家になろうにて連載されていまして、まだ未完の作品になります。作者の黒留ハガネ様は他にも多くの作品を書かれていまして、特に『ノーライフ・ライフ』は『小説家になろう』をよく利用される方には有名なのではないでしょうか。

この方の作品は、とにかく設定が細かいです。よく数字を示しながらの描写をされていまして、よくぞここまで調べて練り込んだなと唸らせられることが多いです。本作品でもそんなシーンがよく出てきますので、数字的な根拠が好きな方には琴線をくすぐられる物語ではないでしょうか。

いずれ他作品について紹介したいなと思います。

 

では、まずあらすじをどうぞ。

 

あらすじ

 ある日唐突にサイキックパワーに目覚めた主人公ッ! 主人公の力を狙う秘密組織が暗躍しない! 学年一の美少女が実は主人公と同じ超能力者だと発覚しない! 異世界への扉が開いて召喚されない! 主人公の生い立ちに秘密などない! サイキックパワーに目覚めた壮大な理由が明かされない! 普通ッ! 圧倒的日常ッ! 何事もないまま学生生活を終え就職! 過ぎ去る凡庸な社会人生活! 全人類を相手に戦争を起こして勝てるサイキックパワーがあるのに何事も無さ過ぎてキレる主人公! もういい! こうなったら俺が、俺自身が秘密結社になって暗躍してやるッ! ようこそ人工非日常へ!!!

 

 

主人公

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高校生時代に突如念動力に目覚める。

 

目覚めた当初は、重さ3gまでのものを自分に向かって引き寄せるか、引き離すことしかできないクソザコ能力であったが、試行錯誤の末に能力は成長する事を発見し独学で鍛え続ける。その結果、比類ない念動能力者となった。

 

自分の他にも超能力者がいるかもしれないと、世界を巡って同類を探し続けたが結局は自称能力者の紛い物しか見つからず、さらには戦うべき強大な敵も現れない。主人公の周りは実に平和で、順調に世の中への絶望を積み上げていくことになる。

 

しかしながら、ついには我慢の限界を迎え、世の中にファンタジーが起こらないのであれば、自分で起こしてやると奮起し、己の超能力をフル活用して暗躍を始める。

 

能力的には他の追従を許さないほどの凄まじさ。地球を粉砕するくらい、その気になれば余裕だと思われる。アラレちゃんかな?

 

治癒能力の修練のために平気で己の骨を折ったり、ヒロインのプレゼントの為にこれまた己の骨を抉りだしたりと普通の思考に見えて、どこかネジが外れている。

 

読んでみて

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超能力に目覚めた主人公となると、通常は非日常に導かれるものですが、この作品は実に現実的です。超能力といったファンタジー要素は主人公以外になく、世の中は通常通りの日常生活が営まれるという斬新な切り口を見せてくれます。

 

期待を裏切られ続けた主人公は、何の心躍るイベントを発生させなかった世界に対して半ギレし、ついには自分でファンタジー要素を作り出そうと動き始めます。

 

彼が取り組んだのは仲間探し。マッチポンプを行う上でのパートナーを彼は求めました。そこで登場するのが、頭脳明晰で容姿端麗なメインヒロイン。

 

ヒロインというと美少女あるいは美女というのが定番であり、この作品も例外ではないのですが、そのキャラ設定で作者様のセンスが大いに光っています。実はこのヒロイン、大層な整形モンスターで声すら自力で変声しているという凄いキャラ。しかも昔の醜い己の写真を自戒としてオープンにし、中二病的な夢を叶えるために人目を気にせず全力投球するようなとてつもない努力家です。こんなキャラ設定をぶっこんでこれるのが本当に凄いです。

 

そんな女性をパートナーとして目に付けた主人公は、念力を使って連絡を取ります。彼女もまた非日常に憧れるが故に日常に対して諦観していました。そこに突如姿を現した非日常。ヒロインの喜びっぷりがとても可愛いので、ぜひ読んでいただきたいシーンだと思います。

 

世界に主人公以外の非日常は存在しないと知って、若干の落胆はしますが、それでも待ちに待った展開にヒロインは喜んで仲間になってくれます。ここで凄いのが、ヒロインの超能力考察。幾通りもの超能力パターンを既に研究しており、主人公の能力の特性を聞くやいなや即座に能力の譲渡方法を導き出してしまいます。そうしてヒロインもまた超能力を手に入れ、彼ら二人の手によって様々な仲間たちを集めていくことになります。

 

そうして出来上がるのが、秘密結社『天照』や闇の秘密結社『月夜見』、そして『世界の敵』です。

 

全ての黒幕として主人公がいるマッチポンプ(特に世界の敵なんかは主人公が念力で動かしています)ですが、各組織に所属するメンバーは本気で自分に眠っていた超能力が目覚めたと思い込んで日常の中の非日常を送ることになります。

 

主人公視点だとコメディではあるのですが、メンバー視点だと実にドラマティックな物語となっています。こうした表現方法はとても面白くて勉強になります。

 

また、上記でも少し触れていますが、本作品に登場するキャラクターたちはとてもバラエティに富んでいるんですよね。完璧整形美女に仏教系美少女、炎を崇拝する氷系能力者とキーワードでまとめてみても、中々のパワーワードが並びます。正直このクオリティとレベルの捻った設定は他では見られない面白さの一つだと言えます。

 

題名にある半ギレという言葉が示す通り、主人公は世の不条理に切れつつも一応は能力の使用についても配慮しながらとなっています。おかげで世界は、超能力フィーバーが起こったり、東京の一部がスラム化したりと多少の変化はあったものの大きな変革といった事態にはなっていません。

 

実はWEB版では、一時期全ギレ版というのが掲載されていました。主人公が世の中への配慮なく、世界を相手に全力で超能力を振り回しすというIFストーリーとなっています。残念ながら現在は取り下げられてはいますが、その物語にも本編のキャラが登場し、あちらとは違う道を歩んだ姿が見られるため、とても面白いお話でした。いつかまた掲載されることを楽しみにしています。

 

読めば良い意味で印象を裏切られる面白い作品です。

ぜひご一読ください。

 

 

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